スポーツでどう解く?どう説く? 藤原修一氏 酒井重義氏-レポート

〇セッション概要

(1)当日のセッションの流れ 
 運動・スポーツを継続していく意味とは何か?特に競技スポーツにおいてはその継続理由として、指導者はどのような価値づけをしているのだろうか?というところから話題提供した。スポーツを”する”ことによって身につくこととはどのようなことなのか?について中学校3年生の道徳の授業での実践をもとに参加者と考えるものとした。他の活動でも身につくであろう「あいさつ」や「礼儀」などだけではない、運動・スポーツ、あるいは各種目特性の中にある魅力とは何なのかについて話し合った。

(2)紹介した実践
 2021年6月に道徳の授業にNPO法人judo3.0代表酒井さんをゲストに招き、内容項目として国際理解・国際貢献を設定して授業を展開した。授業内での題材は、「国際柔道交流」についてであった。酒井さんからの概要説明をオンラインでリアルタイムで聞き、また国際柔道交流の参加者の様子などを動画で視聴し、国際社会で活躍する人とはどんな人かを考えることから、最終的には自分ごととして置き換え今後の生徒自身のあり方について見つめる内容とした。
 授業内での問いは大きく4つ、①国際社会で活躍する人とはどのような人か?、②国際社会と関わるためにはどのようなことが必要か?、③judo3.0の活動を見てどう感じるか?、④国際社会に参画するために自分自身にはどのようなことが必要だろう?とした。①の段階では、英語が話せる人や留学経験のある人などが多くの意見であった。また、②の段階においても英語を学習することや、外国人と交流する機会を得るなど、授業者の想定内の回答であった。しかし、judo3.0の活動を知り、また酒井さん自身のストーリーも知り、国際柔道交流を経験した子どもの後日談も聞くことで、生徒の最終的な回答には大きな変容が見られる。改めて考えてみると、海外の人とつながるツールは言語だけではなく、共通する何かが人を繋ぐことに関係するのではないか?ということに気づく生徒が見られるようになる。そうなるとスポーツをはじめ、音楽や特技など相手とつながることのできることを、自身のアイデンティティとして持っていることが、国際社会に参画する上で必要なこととなのでは、という思考に変容していった。
 何名かの生徒は漠然とした国際社会への参画への一歩が、実は自身が取り組んでいるものの多くが可能性を秘めていることに気づき、今後の生活のあり方について考えるきっかけとなった。今回テーマとしたスポーツをすることの魅力とは、それぞれの種目が特性として持っているスキル的なものが身につくことだけではなく、スポーツをしている経験が人と人とを繋ぐ可能性を秘めているのではないかということも確認することとなった。また、酒井さんから授業中に「もし他県の人と今すぐ繋がろうと思ったらどうします?」という問いが生徒に出され、「その1つが私は柔道だと思ったんです」という酒井さんの表現に生徒は価値観を強く揺らされているようにも見えた実践でした。

〇参加者の声(事後アンケートより)

・スポーツと道徳の繋がりが色々あるなと改めて学ばさせてもらいました。
ありがとうございました!(教員)

〇セッションを終えて

 参加者からサッカーFCバルセロナ下部組織との交流経験から、彼らの姿勢に感銘を受ける場面があったことを聞くことができた。私自身の提案は、スポーツの持つ魅力などの再検討や、学校×スポーツ=部活動、体育だけでない可能性をお話しするつもりでしたが、元来にある部活動や体育の中でも道徳的な部分や要素を強く感じる場面が存在するのだなと感じることができました。直接的に体育に関するセッションに見えなかったか、参加者が少なかったことは、次回セッションを考える際の参考になりました。

(藤原修一)

〇セッション紹介

セッションタイトル
 スポーツでどう解く?どう説く?

セッションの説明
 「スポーツから学ぶことが多い」とするイメージがあるとする。その根拠はなんだろう?もし本当に学ぶことがあるなら道徳の題材にもなりうるのか?実際にスポーツが関連する取り組みを道徳の授業で実践してみました。道徳の授業でどう解く、どう説く?

登壇者
 藤原修一氏 千葉大学教育学部附属中学校
 酒井重義氏 宮城・柔道指導者 NPO法人judo3.0代表