精神科医に学ぶ「いじめ」と「オープンダイアローグ」斎藤環氏―レポート

〇セッション概要 
日本に24万人いると言われる不登校、しかも毎年2万人増えています。この原因の多くは、ハラスメントやいじめにあると言われています。

コミュ力のある人が頂点に立ち、弱い人がいじられるカースト制度は教室で発生しやすい。本人の尊厳を無視し「いじめられた人にも責任がある」と言うのはNG。

斎藤氏の提案するいじめ問題の対応策の基本は、「加害者の謝罪」、「加害者への処罰(≒いじめ加害のスティグマ化)」、「被害者の納得」です。オープンダイアローグは、当事者が集まってフラットな関係で対話を続けること(治療・指導しようとしない)が特徴、いじめの現場で活用されることもあります。講義を終えたあとで、4人一組のブレイクアウトルームに分かれ講義についての意見交換を「リフレクティング」という対話方法で実践しました。

〇参加者の声(事後アンケート・セッション中の発言より)
・対話を行う中で相手や自分の意味づけが変わっていく過程が、解決に向かっていく方向性を生むのかなと思いました。勉強してみたいと思います。とても面白かったです。(教員)
・リフレクティングが良い体験になった(教員)
・「いじめ加害者にどう対応するか」を事前に読んでいたため、理解しやすかったです。資料もいただけたので、もう一度よく復習してみます。(スポーツ指導者)
・現役高校生としてスクールカーストは無意識的に存在しており居心地の良いキャラになり生活していることにお話を聞いて気がついた。(中高生)
・もしあの時、心ある先生がいて、オープンダイアローグを試みてくれたらどうだったのだろうと思います。娘にとってはもちろんですが、いじめていた側の子ども達にとっても、自分達のしていることがどういうことなのか客観的に見ることができ、そこから自分の言動を振り返ってみることができたのかなぁと思います。(いじめ被害者の親)

〇セッションを終えて
多くの参加者に関心の深い内容でした。得手して指導する人/される人という関係になりがちな教育現場だが、フラットな関係での対話というのは新鮮に聞こえたのではないかと思います。リフレクティングを体験したことでオープンダイアローグを学ぼうと思った参加者がいたのは嬉しかったです。一方「学校は加害者に罰を与えることには抵抗があり、『教育的指導』と言う形で対応している」という声が聞かれ、理想と現場のギャップをどのように解決するかが今後の課題と思われます。(安藤裕一)

〇セッション紹介
精神科医に学ぶ「いじめ」と「オープンダイアローグ」
精神科医としていじめ被害者、不登校、PTSD、ひきこもりを含めた多くの患者を治療してきた斎藤教授が、いじめは何が問題か、どういった対策を考えたらよいか、また「オープンダイアローグ」という対話方法の解説をします。そして参加者の方に、学校や職場で「オープンダイアローグ」をどのように活用できるか考えてもらいます。
登壇者 斎藤環氏 精神科医・筑波大学社会精神保健学教授