自身の指導を振り返るためにー「教えないスキル」ビジャレアルの指導を変えたものは何かー

登壇者:佐伯夕利子氏 (Jリーグ常勤理事)

司会:酒本絵梨子(自由学園)

○セッションの概要

日時:2022年 1月22日(土)13:00-14:30

内容:

自分を知るー俯瞰して自分を見てみるとどのように変化するのかー

指導者とは何かを考える

指導者とは、競技を科学的見地から学問として習得し、他者を動機付け、行動を促すことが求められる

「どのような選手を育てたいのか?」ということを徹底的にコーチ同士で話し合い、

①自律・自立

②フットボールを解釈し解決する力

③「ひと」として

の3つを立て、彼らの10年後に責任を持つ

手法を考える

手法は無意識状況だったので、コーチングの動画を撮ることになった

異なる手法(インプット型と問い⇆ファシリテート型)であっても、結果は相手がいることで、練習の手法と勝敗との結びつきに「決定的な因果関係はない」ということを理解し、勝敗に対する肩の力を抜き、10年後の子どもに責任を持つという意識から手法を考えることにした

「自分を知る」からはじめる

歴史を学ぶ

教育・指導法は歴史と結びついているので、歴史から学び直した。

教育学・社会学・教育心理学・認知科学・科学教育学習法などを歴史的に学ぶ

内省・リフレクションを行う/主語は「わたし」?「選手」?

  • 答えを選手に一方的に与えていないか
  • 何を思い、感じているのか彼らに彼らに聞いて見たことがあるか
  • 彼らの行動や判断を裁いて(ジャッジ)していないか
  • 選手の行動や判断を否定していないだろうか
  • 彼らの意見を聞かせてもらっているだろうか
  • 支配的、抑圧的な言葉を用いていないだろうか

傾聴・受容・共感

  • 相手の目で見よう
  • 相手の耳で聞こう
  • 相手の心で感じよう

見ている、聞いている、知っている…つもりになっていないか

考える習慣

  • 脳が活性化されている状態を創り出す
  • 考える癖をつける
  • 問いを投げかける

教えるのか、学ぶのかの違いを意識する

個別最適化

  • 学習者に関心を示す
  • 学習者の関心に関心を持つ
  • あなた(you)へのアプローチ
  • 問いから学習者の気づきを促す

協働学習

  • 丸テーブル
  • 抑圧的ヒエラルキーからの解放
  • 学習者が主体となり学ぶ場(時空間)
  • 協働学習(Cooperative/ Collaborative)

指導者は「学びの機会を創出するファシリテーター」

主体性を育む

何を言ってもダメ出しをされる環境では、人は心のシャッターを下ろして何も意見しなくなる。何を言っても受け入れてもらえる、安心安全な環境こそ、選手たちは成長できる

⑦個人目標の設定

  • 心地よい学びの環境作り
  • 学ぶ意欲を促す工夫
  • もっと良くなると思うよ!

学び合い

学習効果を高める工夫/SWOT分析

発見こそ学び

やってみよう!

失敗?ウェルカム!

取り返しのつかないミスなんて無い!

失敗から得る学びは財産!

⑩指導者の継続的な学び

  • 指導者が進化し続ける
  • 指導者の学びの場を提供
  • 学習者が教える側に

11.「ひと」を育てる

  • 学校の職員会議にコーチたちも出席
  • リアルタイムで、全ての大人たちが「選手」一人ひとりの情報を共有
  • 中1以上の全200名の選手が社会貢献活動を行う

○参加者の感想

  • 佐伯さんの本が、今の自分のバイブルです。今日初めてお話を聞いて、改めて自分自身を俯瞰しながら子どもたちと向き合っていけたらと思いました。
  • 本日持ち帰らせていただいたのは「彼らの10年後に責任を持つ」という考え方でした。企業内で部下や新入社員を育成する立場になったとしても、コーチと子どもの関係性とは違うので、なかなかその考えには辿り着かないこともあるかと思いますが、本質は同じだそこだなとハッとしました。
  • 指導法と勝利の因果関係の話、まさに学習法と学力の因果関係と似ていると感じました。何よりも指導者、教員自体が学び続け子どもたちの未来に責任を持つことも重要だということも再認識させていただきました。

○セッションを終えて

佐伯さんの著書『教えないスキル』を読んで、私が一番感銘を受けたのは徹底された指導者のリフレクションの様子でした。巷ではどのように「教えないで教えられるのか?」という「方法」に注目が浴びがちですが、それを可能にしているのは、一にも二にもリフレクション。なぜその声掛けなのか、なぜそのタイミングなのかビデオに撮り、録音し、それを俎上に乗せて話し合う。
セッションではそこで別れるコーチの反応や、実際に辞めていってしまうような痛みを伴うものである様子も伺えました。

また何よりも衝撃的だったのは、どんな練習を行っていたとしても、勝敗はさまざまな要因が重なっていて、「必ず勝つ練習方法はない」ということを共有し、であるならば子ども自身が自ら考えて成長する練習方法を行っていく、という非常に明快にゲームの本質に根を下ろしているということでした。

すると、方法はもとより、指導者自身が変容していく様子や、文化としてのサッカーを地域の歴史や教育や心理学などを学問からも学んでいく姿勢などは、サッカーに限らず、教員全てに通じる教師教育の原点を感じました。

私が子どもと関わっている姿を「俯瞰して」見ることができるように、常に学び続け、また対話をし、リフレクションする中で、教師自身が成長し続けることの大切さを、改めて感じることができました。

レポート担当:酒本絵梨子

○セッションの紹介

指導やコーチングにおいて、その指導方法を成長させたい、変化させていきたい、ということは往々にしてあると思います。 しかしながら、新しいことを学ぶ、インプットだけで指導者は変容できるのでしょうか?
そこで、「教えないスキル」で著名なビジャレアルの指導を変えた、指導者の問い直し、リフレクションについてお話を伺うところから、自身の問い直しや変容について考えます。