転換期にある学校体育 ―「変化」のために欠かせないものは何か

〇セッション概要

「転換期にある学校体育」という大きなテーマをもとに進められたセッション。

環境は大きく変化している。スポーツ人口の減少は少子化のスピードよりも速く進んでいる現状がある。これには、家計が貧しくなっている経済的要因も影響している。この背景には日本経済の伸び悩みがあり、日本経済を牽引してきた自動車産業にも変調がうかがえる。そして、より大きな問題として、環境に合わせて「変革」をすることが上手くできていない日本社会の現状がある。これに対し、海外企業は、DXや成長戦略の「変革」が著しい。

さらに、日本フェンシング協会が行った、「メダル至上主義」から決別し「アスリート・フューチャー・ファースト」への方針転換を行った実例を検証した。登壇者自身のフェンシング協会での関わりの中で、得た気づきや実際に起きた変革のプロセスを見ることで、「変革」「イノベーション」を起こしていく具体的なやり方についてご説明いただいた。

大きく変化する社会環境のもとに、学校体育はどのような方向に向かうべきなのか?そのためには先ず、何をすれば良いのか?結語にお話しいただいたデザイン性を持ったグラスのように、「行動」を起こして、個々の目指す新しい形を具体的に作っていくことが重要だ。今後の学校体育をどうデザインするかを考え、行動し、動くことにより大きな変化を起こしていくための出発点となる具体的な視座が提示される内容であった。

〇参加者の声(事後アンケート・セッション中の発言より)

・学校体育だけでなく、スポーツ・日本社会を俯瞰してみて何が問題かを考えることの大切さを実感しました。
・学校体育だけでなく、世界経済の話からつながっていくのが面白く スポーツを通して一人の人間として自分をどう考えるか・・心に響きました
・フェンシングでのお取り組みを中心に、アスリートフューチャーの考えにとても共感しました。自分も中学生・高校の時はプロを目指していましたが、その夢は叶いませんでした。ただし、その努力した過程や考え方は、社会人になってからも大きく影響があると思っています。なので、スポーツの競技人口が…という話しもありますが、競技まで行かなくともまずはスポーツを楽しんで行える環境、その後社会に出たときに困らないコミュニケーション力などの社会性を育成する場の一つとして、学校教育、スポーツ現場はまだまだ成長していくことができる、または変えていかなければいけないことがあるなと感じました。


〇セッションを終えて

オープニングセッションとして学校体育やスポーツについて、本質的な問いを与えてもらう内容であった。7日間の最初にこうした内容を投げかけていただくことで、これ以降のセッションの見方にも影響していればと思う。学校体育の担う部分と、トップアスリートが置かれる環境をどのように設定していくは今後の体育・スポーツのあり方に大きな影響があることがわかる。個人的にはやはり最後に投げかけられたグラスを例にした表現は、体育・スポーツに関わらず何か行動する際には重要なことであるように感じた。

(藤原修一)

〇セッション紹介

転換期にある学校体育 ―「変化」のために欠かせないものは何か

社会環境が大きく変化する中、学校体育や部活動、地域スポーツはこのまま変わらずにいら
れるのでしょうか?学校体育や地域スポーツの「改革」のために欠かせないものは何か。今
の日本が直面している問題や日本フェンシング協会の取り組み「アスリート・フューチャー・
ファースト」などを例にお話をいただきます。

宮脇信介氏(元日本フェンシング協会専務理事・ベンチャー企業役員)