2020年1月11日(土)、お茶の水女子大学附属小学校にて、未来の体育共創サミットが開催され、分科会にて「発達障害から未来の体育を考える」を担当しました。その様子を以下、簡単に報告させていただきます。
分科会は、酒井重義(NPO法人judo3.0)と積田綾子氏(小児専門医)の講義と参加者の交流会が行われましたが、主な講義の内容は以下の通りです。
酒井から
①運動の効果について
近年の脳と運動の研究を紹介、運動すると脳細胞の栄養が生まれたり、セロトニンなどの神経伝達物質が活性化したり、ニューロン新生が生じることなど。その関係から運動には学力や意欲などを高める効果があることや、様々な疾患や障害に対する薬のような効果があるが示されていることなど。
②体育の先生による「発達障害」の捉え方について
コミュニケーション、人間関係、問題行動、学習などに注目が集まっていた発達障害だが、近年、感覚過敏や感覚鈍麻、そして、身体の不器用さに注目が集まっていること。発達性協調運動障害(DCD)を紹介し、様々な問題行動の背後に「身体がうまく動かない」という要因があり、身体がうまく動くようにサポートすると、派生的にコミュニケーション、人間関係、問題行動、学習面などにいい影響がいく可能性があり、このように発達障害を「身体」から捉えすと、体育の先生の役割は非常に重要であること。
③運動の届け方について
脳の研究によって発達に運動が必要なことがますます明らかになったが、凸凹の子供たちにその運動をどうやって届けるかが課題である。酒井らはNPO法人judo3.0の立ち上げ、地域の柔道クラブでの受け入れを促進させようという活動をしていること。
積田綾子氏から
小児専門医として診察した経験から、発達障害であるとの診断を受けた子供が運動したとき、どのような改善が見られたか、運動と発達障害についての実際の症例の報告。
参加者からは、以下のような感想をいただきました。
「医師という専門的な立場から、発達障害のある生徒の症状が運動で実際に改善された、という報告があったことがとても印象的だった」
「体育の先生が発達障害に対して、そこまで重要な役割を担っているとは思っていなかった」
当日は予想を反して、教室の椅子が足りなくなるほどの多くの皆さまにご参加いただき、発達障害と体育に関する関心の高さが伺われました。このような学びの機会を今後も作っていけたらと思っております。今後とも何卒よろしくお願いいたします。
酒井重義(NPO法人judo3.0)
2020年7月追記
NPO法人judo3.0は「発達が気になる子が輝く柔道&スポーツの指導法」という本を出版しました。詳細はこちらのウエブサイトをご参照ください。