学校×企業でつくる、より豊かなスポーツライフ -小林浩平氏 松本大輔氏-レポート

未来の体育共創サミット2021に、小林浩平氏(株式会社ウェルネスフロンティア/元中学校保健体育科教諭)と松本大輔氏(西九州大学子ども学部 准教授) が登壇くださり、セッション「学校×企業でつくる、より豊かなスポーツライフ」が行われました。以下、本セッションのコーディネーターを務めた酒本絵梨子氏(自由学園 准教授)によるレポートです。

セッションの概要
日時:2021年1月22日(金)19時〜20時
内容:学校と企業の連携に関してはまだまだ課題があり、どこか壁のようなものが存在しているように感じています。学校教諭として12年の現場経験を元に、現在は健康教育の普及として学校の外から教育を支える仕事をされている小林様から学校と企業が連携した実践を報告していただき、実際に企業と連携した授業をされ、また体育科教育をご専門にされている松本先生にその教育的価値や教師の在り方について考察を伺いました。

(1)学校×企業で新しい体育の可能性を創造したい!

12年間中学校の教員をした後、現在の職場へ転職しました。教員時代から子ども達のためになるのであれば、社会と学校がどんどん関わっていったら良いと思っていて、現在は、「WELL FIT」という健康支援のサービスを起こし、学校の外から子ども達の学びになることはもちろん、労働環境の改善や教科・部活動負担軽減など、教員にも成果が出ることを願って活動しています。

ジムがあっても、すでに運動が好きな「見込み層」が参加するだけなので、これからは学校と一緒に事業を行うことで、運動が嫌いな「潜在層」にも運動する機会を提供したいと思っています。

(2)自分の体を見つめる体育の可能性

東洋英和女学院中学・高等部との連携事業では、「体つくり運動」「ダンス」の領域の一環としてヨガ、ダンス、格闘技エクササイズなどの実施や、健康教育の一環として講演会が実施されました。教員から「今回のように、もっと自分に引き寄せて自分のこととしてどう実践していくか、を考えさる授業にしたいと思いました」というコメントをいただけたのはとてもよかったです。

生徒からの反応としてはヨガの満足度が高く、今後やってみたいものとしては、ヨガ、ボディメイク、ダイエットなどが挙がっていて、女子中高生には自分の体、美や癒しといったことに関心が高いことがわかりました。ここにスポーツ教育だけではない、自身の体を見つめる体育の可能性が示唆されたと思います。

また、インストラクターの「他人と比べない」「評価されない」ことで運動が苦手な生徒や、体育に前向きになれない生徒が特に楽しんでくれたことが収穫だったということで、生徒はもちろんのこと、そのような外部人材の姿を見る教員にも効果があったように感じています。

(3)【企業×企業】×学校

すでに学校と一緒に事業を行なっている企業が仲介役になって、他の企業のリソースを子どもに伝えることで、他の企業にも可能性があるように感じています。

現在はライズTOKYO株式会社との共創事業として、睡眠教育をはじめました。実際にマットレスに寝てくらべることなどを通して、睡眠の質について学んでもらいました。

(4)大学(教員養成課程)×企業

西九州大学の教員養成課程の講義の中での連携も行いました。実際にコンテンツを体験してもらうだけにとどまらず、今後、オンライン授業が広がっていく学校現場を想定していくと、教員養成課程の学生が、オンライン指導における教員の価値・役割を考える機会になったのではないかとも感じます。

(5)まとめ

未来の体育および学校教育では学校、地域、企業の連携が一層求められてきます。偶然にも新しい学習指導要領の「社会に開かれた教育課程」の明示や国連サミットで採択されたSDGsは2030年を一つのゴールとして設定しています。

しかしながら、学校と企業の連携に関してはまだまだ後進的であり、どこか壁のようなものが存在しているように感じています。より豊かなスポーツライフを育むために現場の先生方とのディスカッションを深めていければ幸いです。

(6)質疑応答・ディスカッション

◆オンラインの効果について

・これまで地域のリソースを使って学ぶということはあったが、その地域のリソースに格差があったことは確か。優良なコンテンツをどこの地域いても受けられるようになったのは、とても大きい。企業と繋がりやすくなったとも思う。

◆学校と企業が繋がるときにある壁についてのディスカッション

・公立の学校は組織が大きくて、個人でイメージしたものを全体に了解を得ていく労力、時間がとても掛かる。ここが改善されないと実践にたどり着かない。

・民間企業側も個人で動いていても、公立の学校と繋がるのには課題がある。

・実践する学校を見つけるのは、実際に苦労しているところ。正直、今は自分の繋がりを使うしかない。今後プラットフォーム作りが必要だと思う。また、先生方には企業は動いていることを知って欲しい。

・産、学とさらに「官」が動かないと難しい場合がある。そこには働きかけていきたい。オンラインコンテンツとなると、1校に限らず、その自治体の学校全部が同じコンテンツを同時に受講できる可能性、例えば1講義を6校で受ければ、これまで講師を招聘すると6校分費用が発生していたのが、お一人の講師の授業を同時に6校で受けられるので、費用面でのハードルは下がっているのではないかと思う。また、この教育効果のエビデンスを研究者としては明確にしていきたい。

・企業と連携した授業の実践を重ねて、それを学会のように学校の先生がアクセスしない場所ではなく、学校の先生が気軽に見られるようなプラットフォームが必要だと感じる。前例があると取り組みやすかったり、組織の了解撮りやすくなるし、官も動きやすくなると思っている。

◆学校を社会に開くということ

・知らないものに手を出すことは怖いので、子どもを外に出すのは難しいんだろうと思っている。そこへのアプローチとして、子どもと一緒に教員も一緒に受講してもらえるというところが良い点だったと感じている。一緒に先生も「面白い」「楽しかった」を経験してもらうと良いなと思っている。

・教員の意識の問題は大きい。学校の外には優良なコンテンツは山のようにある。一方で、自分で教えた方が楽だと思っている先生方は多い。しかし、楽さではなく、より良いコンテンツを子どもに受けさせたいと思って動けるかどうか。そのアクションの動かし方はいろいろあるが、例えば大学の先生と繋がって、大学を巻き込んで研究費を使って一緒にすることも可能ではないかと考えている。

・授業での実施は本当は壁が高いと思っていた。当初はアフタースクールや部活からかと思っていた。実際に授業との連携は、単元としてはダンスや体つくりの枠の中であれば、いろいろと可能性を感じている。さらに、健康という観点では保健との連携が可能ではないかと思っている。

(7)松本氏による考察-新しい時代の教員の役割とは-

最後に松本大輔先生に学校と企業が連携する際の、教員の役割について教育学的視点からお話していただきました。

◆オンライン“教材”

今回の外部講師による指導プログラムだが、外部講師が教えてはいるのだが、「教材」と位置付ける必要がある。ビデオの垂れ流しよりも双方向のやりとりが可能になるので、より教育的効果は認められると思うが、授業をマネージメントしていくのは授業者、教員であって、オンラインであっても、あくまで「教材」である。

 これから迎えるSociety5.0、そしてすでに現在も教員が持っているものよりも質の高いコンテンツが多数、出てくるし、今もある。しかし、それを与えれば教育になるかというとそうではない。このコンテンツをコンピテンシーとして子どもに落としていくのは、教員の役割になっていく。

◆これからの教員の役割・能力

これまで教員は「コンテンツの指導」を一生懸命やっていたが、これからコンテンツが如何様にも提供されるようになってくるとすると、今、目の前にいる子どもにコンピテンシーとして身につけていくのが、教員の力量になってくる。

 実際に講義をしてみて、教員は常に評価行為をしていて、全体に説明が必要だと思ったら、一度止めたり、動きが止まっている学生を見たらフォローに入ったりと、役割が変わっていることをよく感じた。

このようなことを前提にこれから教員はどのようなことを勉強して身につけていったら良いかということを考えていきたい。

文科省からも企業とのマッチングする大学には補助金が出るようになってきた。今後、やりたいことを進めていく、教員の企画力、創造力が必要とされるのではないか。

(8)セッションを終えて

これからより良いコンテンツが溢れてくるような時代は目の前に迫っている中で、コンテンツをいかに上手に教えられるかという教員の役割は終わり始めていることを強く感じました。しかし、そこを乗り越えていくにはさまざまな壁があり、その壁を越えていくには、少しでも実践を重ねて、横の繋がりを強めていくことが必要だろうと思います。今回ご参加いただいた方々から、一つずつ進めていけるように、このような対話の場をまた作っていきたいと思います。

(文責 酒本絵梨子)

セッション紹介

セッション名
学校×企業でつくる、より豊かなスポーツライフ
セッション内容
未来の体育および学校教育では学校、地域、企業の連携が一層求められてきます。偶然にも新しい学習指導要領の「社会に開かれた教育課程」の明示や国連サミットで採択されたSDGsは2030年を一つのゴールとして設定しています。しかしながら、学校と企業の連携に関してはまだまだ後進的であり、どこか壁のようなものが存在しているように感じています。筆者は学校教諭として12年の現場経験があり、現在は健康教育の普及として学校の外から教育を支える仕事をしております。二つの視点を元に、より豊かなスポーツライフを育むためのディスカッションを皆さまと共有できれば幸いです。今回は「日本を健康に」の事業理念の元、弊社が取り組んでいる学校での事例を紹介し、未来の明るい教育について提案させていただきます。
<事例紹介>
①東洋英和女学院中学・高等部での取り組み(授業・課外活動での健康教育、フィットネスレッスンの提供)
②西九州大学(教員養成課程)での取り組み(教員養成課程の学生へのオンライン授業、専門性の追求)
③他企業との連携(ライズTOKYO株式会社との共創事業「健康睡眠プロジェクト」)
講師
小林浩平氏
株式会社ウェルネスフロンティア(スポーツクラブJOYFIT) 元中学校保健体育科教諭
松本大輔氏
西九州大学 子ども学部 准教授 
社会の流れに応じて、大学での教育も変化、進化は必要です。今回の取り組みを通じて、オンライン教材やこれからの体育授業、教師の役割などについて議論していきたいです。そして、皆様の意見を踏襲しながら質の高いコンテンツやオンライン教材の可能性、教師の役割を共有し、未来の体育について学校に関わる全ての人にとってよりより教育になるような方向性を考えていきたいです。

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