〇セッション概要
学校で生徒たちが安心・安全に過ごせる状態というのは、彼らの人権が保障された状態であることに他なりません。その観点から、大人に知っておいてほしい子どもの権利や教育機会確保法、合理的配慮の考え方を紹介しました。教育現場で日常的に起きうる場面や体育授業における生徒の「しんどさ」を、人権というフィルターを通して眺めてみると、そこにはどのような問題が含まれているのかが見えてくることがあります。また、生徒を追い詰めることになる「指導」や、そもそも身体の疾患や障害から体育に安全に参加するために配慮が必要なケースについても触れました。全ては網羅できませんが、教師が知ってくれているだけで生徒の安全・安心につながることも少なからずあるため、特に体育で配慮が必要となるケースを集めて紹介しました。ディスカッションでは、4つの事例を通して、どのようにすれば生徒がより安心・安全に学校で過ごすことができるかを参加者の皆さんと意見交換しました。
〇参加者の声(事後アンケートより)
・永井さんのスライドの内容は、どこかで提示なさらないのでしょうか? あらためて考えさせられました。単なる教員批判ではなく、また単なる教員擁護でもなく、子どもの、そして教員の、さらにはこの社会にとっての「良い」とは何か、考えていける学校でありたいと思いました。ありがとうございました。
・よく聞いていると発表者の先生の伝えたいことがそのまま波風立てることなく流れていくのではなく、発表内容をもとに本音が出てきていろいろ考えさせられました。
・自分の行う体育授業を見つめ直すきっかけになりました。つい先日教科会で、実技のテストについて話し合う機会がありました。実技のテストは1回のみ、みんなの前で順番に・・・という先生に対して、授業の中での毎時間の取り組みの積み重ねで評価しているという私の説明になかなか折り合う点が見つからずという状態でした。少し勇気づけられた気がします。ありがとうございました。
・生徒が安心して参加することのできる体育授業の実現を中核に様々な立場の参加者の皆様と対話し、現在“当たり前”とされていることに対してハテナを持ち続けることの重要性を学びました。「教師の都合」ではなく「子どもの感情・安心のある学び」を心の留めた授業実践が求められていると感じます。ありがとうございました。
・「できない」ことに対してネガティブ過ぎる気がしました。子どもがそう捉えているのは、大人がそのように表現しているから。「できる・わかる」に向かう授業作りであることから、スタートは生徒の「できない・わからない」だと思うのです。できることだけやっていても、成長にならない。やりたいことだけやっていても、新たな成長は得難い、と思います。だからこそ、教師は生徒の「やりたい」「楽しい」をどう引き出すか…を考えて、色々な工夫や仕掛けをしていると思います。また、個別対応の内容を全体対応に適応すると、現在の学校では対応しきれなくなることも多々ある(人手や時間、場所などの不足等)ので、目的に対する個別対応と全体指導の内容とバランスってかんたんではないなぁと思いました。そして、内容よりも教師のスタンスがだいじだと思いました。最後に、体育を好まない生徒側だけの視点をもった講師だったように感じてしまったので、話の展開において、もう少し視点の幅が欲しかったです。でも、色々な方のご意見伺えて良かったです。耳だけ参加となりましたが、大変勉強になりました。ありがとうございました。
〇セッションを終えて
ある生徒への個別の配慮や対応は、結果的にその学級全体の生徒にとっての安全・安心にもつながります。現状では、学校や先生によって授業づくりの視点そのものが異なることで、学校間、またはどの先生に当たるかで生徒の「しんどさ」に大きな差があるのだろうということが、皆さんのお話を伺う中で改めて感じられました。乗り越えることで成長につながる「しんどさ」とは何か、耐える必要のある、または、必要のない「しんどさ」って何だろうと、さらに考えてみたいと思いました。皆様からのフィードバックは私自身の励みにもなり、新たな気づきも多くいただきました。本当にありがとうございました!
(永井美佳)
〇セッション紹介
セッションタイトル
生徒が安心して参加できる授業ってどんな授業?
セッションの説明
「体育が嫌」と感じる生徒たちはどんなことにしんどさを感じるのでしょうか。 運動が苦手であること以外にも、実は多くの要因があります。このセッションでは、生徒たちの様々な「しんどい」事例を紹介します(なお、事例は架空のケースも含めて、個人情報保護に配慮された内容となっております)。 それらを通して、生徒が安心して参加できる授業を作るために何ができるか、一緒に考えませんか。
登壇者
永井美佳(公立中学校相談員)