「あそび」で「学び」をアップデート!〜一般社団法人「あそび庁」の取り組みから〜  小山亮二氏(一般社団法人あそび庁代表理事)久保賢太郎氏(東京学芸大学附属世田谷小学校/東京学芸大学大学院連合学校教育学研究科博士課程)―レポート

〇セッション概要
「あそび」のもつ教育的価値や可能性に着目し、「あそび」による「学び」、「あそび」を通したwell-beingの実現を目指して事業展開をしている「あそび庁」という団体があります。本セッションではまず、「あそび庁」の理念や事業についての説明が、代表理事の小山氏よりありました。事業の中では、学校で実施された検証実践の効果測定結果や、具体的な活動の様子などが報告されました。例えば、「あそびを通したwell-beingに関する授業実践」や「tiktokを使ったあそびづくりの授業実践」「メタバース空間での運動会」などが紹介されました。
小山氏によるプレゼンテーションに関する質疑応答のあと、ブレイクアウトセッションにうつりました。各ルームでは、「あそびの教育的価値」「現代の児童・生徒の実態や課題」「あそびを中核に据えた授業実践の実際」「学校教育と評価」などといった現代的な課題について、熱心な議論が展開されたようです。
ブレイクアウトセッション後の全体議論では、学習者の意欲を生かしての「あそび」を中核とした授業実践を教科横断的な授業の一環として考えてはどうか、などといった具体的な意見が聞かれました。

〇参加者の声(事後アンケート・セッション中の発言より)
・「あそび」のもつ教育的価値について再考する機会となった。
・「あそび」を体育科として取り入れるのか?それとも特別活動や総合的な学習の時間として位置づけるのか?それとも「あそび」という教科として位置付けるのか。今後の展開が楽しみである。
・体育科の中で「あそび」を位置付けた場合、または「あそび」という教科として考えた場合、その評価はどのようにしたらよいのか。本来、体育などは「評価」にそぐわないという面もあると思うが、従来の評価観自体を再考する機会となるかもしれない。
・「あそび」を知らない中高生の姿。休み時間になるとひたすらスマートフォンに向かう生徒の姿に危機感を覚える。「あそび」庁の取り組みは、「あそび」の意義や価値をもう一度考え、広める機会になるのではないか。

〇セッションを終えて
「あそび」と「体育」は親和性が高く、その意義や可能性について、古くから語られてきました。他方で、本来「あそび」であるはずの「スポーツ」が、組織化・社会化された近現代スポーツとの関係からのみ語られたり、「目標・達成・評価」型の1970年代の教育モデルの中に回収されてしまったりなどする中で、「あそび」自体がもっている「教科教育の枠を超えた可能性」について、あまり論じられてこなかったのではないかと思います。
今回、「あそび」を切り口にしながら、体育科教育や評価の在り方、授業デザインの仕方など、「教育」そのものを問い直す議論がなされていたことは、非常に意義深いものであると感じます。「産・官・学・民」の垣根を越えた学びのフィールドをデザインすることが求められる昨今、今回のセッションをきっかけに、「あそび庁」と教育関係者が一緒になって、「あそび」と「学び」を考えたり、そうした環境デザインしたりすることができれば、大きな「次の一歩」になるのではないか。そのように感じたセッションでした。(久保賢太郎)

〇セッション紹介
セッションタイトル
「あそび」で「学び」をアップデート! ~一般社団法人「あそび庁」の取り組みから~ 
セッションの説明文
学校教育の外から、「学び」を考えようとする動きが広がっています。「あそび庁」では、その名の通り、「遊び」のもつ教育的価値や可能性を生かし、事業として展開しております。本セッションは、代表理事を勤める小山亮二さんをお招きし、 実際の事業内容
①あそびを体験しながらWell-beingの視点を学ぶ授業
②動画配信TikTokと連動したあそびクリエイター授業 
③カラダを動かすことの動機付けとしてのメタバースの活用授業 
などを紹介いただきながら「遊び」のもっている価値や可能性についてみなさんと検討したいと思っています。
登壇者氏名(肩書)
小山亮二(一般社団法人あそび庁代表理事)

久保賢太郎(東京学芸大学附属世田谷小学校/東京学芸大学大学院連合学校教育学研究科博士課程)