発達障害に配慮したスポーツ環境を作ることができるか?柔道の場合

〇セッション概要

 前半に脳や心の発達の仕組みについてお話しいただき、運動あるいは柔道がこうした発達とどう関係しうるのかをひも解く時間となった。講義形式ではあるが非常に専門性の高い内容で、実際に様々なスポーツクラブに統計上存在する発達障害を持つ児童生徒への関わりに対する考えを登壇者から述べた。後半は登壇者自身の実践を含め紹介があり、特に柔道指導における発達障害に配慮した取り組みや指導者への講習会の実践などをご紹介いただいた。競技性の高い活動を否定するわけではないが、それだけで普及やスポーツ指導といえるのか?という問題提起を参加者に行い、当日はそれぞれの立場で議論することができた。

〇参加者の声(事後アンケート・セッション中の発言より)

・柔道以外でも、発達障害等に配慮したスポーツ環境や体育にかかわって、その競技の楽しさや素晴らしさに迫ることができるといいな、と感じました。どの競技団体にも、「強化」と「普及」の分野があり、両者を分けて進めるよりも共存することが大切かなと思います。世界で勝負して結果を残すスポーツが脚光を浴びて、商業化されがちな部分もあるように思いますが、トップアスリートほどその競技の本質を楽しんで多くの人に伝えられるのかな、と思います。
 自分がうまく踊れなくても仲間が踊ることでその波動を感じたり、見せることが目的でなくても踊ることそのものに没頭することができたり、それらのことがきっかけで体を動かして、スポーツに触れていくことができれば、その子の世界は広がるだろうと思います。
 身体機能のことや感覚統合のことも、専門的に聞いてみたいと思いました。

・体を動かすことが人間形成につながったり、コミュニケーションツールになったり、「発達障害」の本質を知ることで私たちが向かうべき未来が見えた気がしました。

・めちゃくちゃ面白くてびっくりしました。体を動かすことが、脳や心の発達にもつながることに、実感をもって共感しました。我々は「できる」という概念を捉え直さねばならないという思いを強くしました。「上手に、うまくできることで、強くなる」モデルから、「動かなかった部分が動けるようになる」とか「楽しく自由にできる」モデルへ。私もできそうなことから始めてみたいと思いました。

〇セッションを終えて

 発達障害を抱える児童生徒へのアプローチは、文部科学省の統計結果からもわかるように決して特別なものでなく、どのスポーツ指導現場に必要なものであるということを改めて認識した。特に今回は柔道指導の視点から「どのような実践を行い、課題がどんなところにあるのか?」について考えたが、こうしたセッションは他の競技における実践にも役立つことであろうと考える。今後対面形式でのセッションが実施される際には、体験型のセッションを開催し実際に児童生徒役として指導を体験することも、他の競技での実践に活かされるため開催を期待したい。

(藤原修一)

〇セッション紹介

発達障害に配慮したスポーツ環境を作ることができるか?柔道の場合

発達障害はグレーゾーンを含めると子供の約1割が関係すると言われていますが、彼ら彼女らのスポーツ環境をどのように整えたらいいのでしょうか。本セッションでは、部活とクラブを合わせて国内に約7500のコミュニティを有する「柔道」という競技種目に注目して、指導者向けの研修や、競技統括団体への要望書の提出など、業界全体の環境改善に取り組んでいるNPO法人judo3.0の活動事例を紹介し、参加者の皆様と「発達障害に配慮したスポーツ環境を作るためには?」について意見交換をいたします。

酒井重義氏(NPO法人judo3.0代表)