地域のスポーツのこれから-教員から転身して道場を起業-綾川浩史(文武一道塾 咲柔館 館長)

 2021年1月17日(日)、未来の体育共創サミット2021(オンライン)において、「地域のスポーツのこれから」をテーマとしたセッションを長野敏秀先生(ユニバーサル柔道アカデミー代表)と共に担当しました。その中で私が担当した部分につきましてご報告させていただきます。

1.主な内容

①自己紹介
・中高一貫校で17年間教員として勤務(女子柔道部監督)

・「文武一道塾 志道館」(専業の柔道場)で1年間勤務

・「文武一道塾 咲柔館(しょうじゅうかん)」(専業の柔道場)を栃木県栃木市に開館(2020年6月)

②柔道場を作ろうと思ったきっかけ
・イギリス人の友人が「イギリスで柔道場経営をやればきっと成功する」と話していた。(約15年前)
・フランス人の柔道家から「なぜ日本の柔道は試合ばかりにこだわるのか」と質問された。(約5年前)

③活動内容紹介
・子どもクラス(幼年部・少年部)
 活動の軸は、柔道遊び、柔道の基本練習、学習(素読、読書、作文、宿題など)。「文武一道」の理念に基づき、心と頭と体の力をバランス良く鍛える。

・大人クラス(中高部・一般部)
 初心者やブランクが長い方を対象とした、基本中心の稽古を行っている。活動の主たる目的は、心身の健康を向上させること。

④人気がでる(収益化を見込める)スポーツ・武道の3条件
・安心安全 →安全な技術、服装、施設
・発表の場 →昇級、昇段・試合・発表会
・かっこいい(かわいい・美しい)→服装・技術・代表的選手・内面、生き方

2.主な質疑応答

Q・柔道場を始めた時に苦労したことは何ですか?

A・まずは「新型コロナウイルスの感染拡大」です。開館を約3ヶ月遅らせ、活動も大幅に制限されました。次に「集客」です。柔道の価値を多くの方に知っていただくために、ホームページはもちろん、今までやったことがなかったSNSも活用しています。まだ開館して半年なので苦労は尽きませんが、アイディアを絞り出しながら、一歩ずつ前進していきたいです。

Q・海外の柔道家に、日本の「競技重視柔道」について疑問視された時に、戸惑いませんでしたか?

A・私は、そもそも「柔道は教育」という考えに重きを置いていたので、海外の方の考え方に共感できました。海外では「幼児教育」や「生涯スポーツ」として柔道を活用している例が多いです。海外の方は柔道の価値をよく分かっています。国内だけでは見えにくい柔道の本質的な素晴らしさを、海外の方から教えていただくことは多いです。これからも、国内外の柔道家の方々から色々なことを吸収していきたいと思います。

3.セッションを終えて

地域スポーツで最も大切なことは、その地域に住む老若男女それぞれの「ニーズ」に応えることです。スポーツには「子育て」「高齢化」など地域が抱える様々な課題を解決する糸口もあります。その上で、「競技力向上」とは違った目的を持った柔道場が存在する意味は大きいと再実感しました。
 私は、競技としての柔道も大好きですが、それとは違う方向の活動を行うことで、地域に貢献したいと考えています。今回ご参加された方々との交流を通じて、色々なアイディアも浮かびました。この機会を次に生かし、これからも地域、柔道界の発展に尽力していきたいと思います。

綾川 浩史(文武一道塾 咲柔館 館長)

セッション概要

日時
2021年1月17日(日)16:30-18:00
セッション名
地域のスポーツのこれから -教員から転身して道場を起業&勝つことを一旦止める-
セッション内容
全国のスポーツ少年団が大幅に減少するなど、地域のスポーツ環境は大きく変化しています。そこで、
①スポーツ指導をすることで「飯を食っていける」環境ができてこそ地域のスポーツは豊かになるという想いから、学校の教員から転身して道場経営をはじめた栃木県の綾川浩史氏、
②「勝つことを一旦止める」という方針を掲げ、発達障害のある子もない子も共に柔道できるクラブを立ち上げた愛媛県の長野敏秀氏、
二人の挑戦者が見ている未来を伺いながら、地域のスポーツのこれからを話し合います。
登壇者
綾川浩史氏
文武一道塾 咲柔館 館長 國學院大學栃木中学・高等学校において17年間勤務、女子柔道部監督を務める。その後、文武一道塾志道館(東京)において幼児から社会人まで幅広い年齢層を指導したのち、2020年6月21日、栃木県栃木市に文武一道塾 咲柔館を開館する。
文武一道塾 咲柔館のウエブサイトはこちら。綾川浩史先生が連載するnoteはこちら

長野敏秀氏
ユニバーサル柔道アカデミー代表。 四国中央市役所発達支援課( 子ども若者発達支援センター) 勤務。一般財団法人愛媛県柔道協会理事長。地元の少年柔道クラブで長年指導するが、指導のあり方に問題意識をもち、2015年9月、愛媛県四国中央市にて、発達障害のある子もない子も共に柔道ができる環境を目指して、少年柔道クラブ「ユニバーサル柔道アカデミー」を設立。著書に「発達が気になる子が輝く柔道&スポーツの指導法」(共著)がある。