柔道のこれからを考える- 学校授業・嘉納治五郎・国際交流の視点から-(藤原修一氏 金正嘉彦氏 酒井重義氏)

2022年1月16日、未来の体育共創サミット2022にて、「柔道のこれからを考える- 学校授業・嘉納治五郎・国際交流の視点から-」というテーマでセッションが実施されました。以下、講師によるセッションレポートです。

1.セッションの概要

(1)学校柔道から見る柔道について(藤原修一)

①イメージとのギャップを面白さに?!
授業の冒頭に柔道のイメージを中学生に聞いてみると、生徒は柔道をしたことなくても”背負い投げ”のような技名や、”受け身”というものがあることを知っているなどの状況があリます。授業において、このような生徒が持っているイメージを膨らませるような内容を構成をしていくことが大切になると考えます。授業の内容を工夫することで、”意外とできるぞ”や”思ったよりも難しい”など、当初のイメージとギャップを生むようなことができると生徒にとって”またやりたいな”となるきっかけになるのでは?と思うところです。

②技名は一緒でも動きはオリジナル?!
柔道の投げ技には多くのものはあります。1つの技に”内股”があります。著名な選手として井上康生氏と大野将平選手を例に挙げると、2人の得意技を内股であると捉えた時、全く同じ動きであることは考えにくい。そこにはきっと”内股”に共通する動きや、それぞれの特性に応じて工夫できる部分、実践する中で自身にあっている部分があるのではないかと思っています。取り組みの中で、得意技が見つかるところまで活動できると、一様に学習した投げ技から自分に合ったわあを選択し、やりやすい動きを作ってオリジナリティなる技を作る楽しさを感じられるといいなと思います。

③指導者はあんまり見せないのが大切?!
私が見聞きする柔道授業の中には、教員が示範し、その動きを全員が真似をするだけの授業があるのではないか?そこには主役である生徒が考えたり、主体性を持って取り組む余地が少ないのではないかと思います。現在の学校の環境にはICT機器が多く導入されつつあり、動画や映像などを共通資料として共有することができる。こうした環境下では、もはや教員はやたらに動きを示すことは生徒が自由に自身の感性をもとに考える機会を狭めるのかもしれません。これからの柔道の授業をより発展的に展開するためには、あえて専門性の高い動きを見せない授業を目指すことが柔道の経験の有無に関係なく、汎用的な授業方法として提案できるのではないかと思います。どうしても柔道のイメージについてまわる、”痛そう””辛そう””危ない”などのネガティブなイメージを払拭するだけの授業方法を柔道を専門とする指導者が考えていくことが今後の学校授業での柔道に明るい兆しが見えればと思うところです。

(2)嘉納先生を訪ねて〜『自分の人生と重ねて学ぶ事とこれから』(金正嘉彦)

以下の通り、自分の人生と重ねながら嘉納治五郎先生の生涯を説明して、年を重ねたからこそわかる柔道の魅力についてお話させていただきました。

  1. 中学から始めた柔道で近畿大会や全国大会に参加できた仲間との喜びと絆(〜16歳)
  2. 16歳で母を亡くし励みと支えとなった先輩諸氏と稽古仲間(〜18歳)
  3. 大学入学時すぐに父が倒れ柔道を離れた苦学生時代も鍛錬になったと感じた社会人前半(〜30歳)
  4. 働き盛りに胃潰瘍やうつ状態で苦しんだ時(〜40歳)
  5. 東京転勤での奮起も空回りで父の介護もあり大阪に戻り転職を繰り返した事(40歳〜)
  6. そんな時に柔道をする事がいい居場所になっていたと感じていた頃(〜50歳)
  7. 父の介護がきっかけでヘルパー職で地元で適職と感じた事(〜60歳)
  8. 障がい者支援に注力し柔道を復活し継続できた事(〜60歳)
  9. 今後〜嘉納先生の時代背景を思うにまだまだこれからと再認識でき柔道のご縁に感謝と恩返しを改めて感じた事…等を伝えたいと
  10. 『精力善用』『自他共栄』+『尽力竢成』を考えたいと…☆スポーツへの熱意と指導力を学び真の教育者としてのコーチング力を学びたいと感じました☆5月4日の命日にも尋ねたいと思っています。

(3)柔道のこれからを考える-国際柔道交流の視点から-(酒井重義)

世界中に友達が100人できる教育を柔道は作ることができる、という点が柔道のこれからにとって有益な視点になると思っています。以下、①柔道は世界に居場所を作る方法である。②オンラインで会えばリアルの交流につながる、という点について触れたいと思います。

①柔道は世界に居場所を作る方法である
私は、アメリカの道場を訪問したことがあるのですが、英語がうまく話せないにもかかわらず、柔道をしたらすぐに友達になって「このあとご飯食べに行こうよ」と仲良くなることができたことに衝撃を受けました。2020年に教育改革が行われ、英語の早期教育などグローバル教育の重要性が高まっていると思いますが、国際柔道交流はグローバル教育としてとても効果的です。柔道発祥国として日本の子供に関心を寄せてくれるコミュニティが世界中にたくさんあります。競技スポーツは、地域大会、県大会、全国大会、世界大会と、強くなると海外に行くルートがありますが、そこまでたどり着かなくても、子供たちが国際柔道交流ができるよう、私たちが運営するNPO法人judo3.0は子供たちの国際柔道交流をサポートしてきました。

オンラインで会えばリアルの交流につながる
年々、国際柔道交流をする子供は増えてきて、特にヨーロッパから日本の地域の柔道クラブに来る子供たちが増えてきましたが、コロナ禍で中止となりました。もっとも、コロナ禍で大きな発見をしました。国際柔道交流に関心がある指導者、生徒は限定的でしたが、ビデオ会議を使って、海外の柔道クラブと日本の柔道交流のオンライン合同トレーニングなどを行いましたが、オンラインで会えば、その国に行ってみたくなる、ということです。オンラインで会う機会を作れば作るほど、子供たちはリアルで海外に出て柔道交流をして、世界中に友達を作るだろう、と思いました。したがって、これから日本及び世界の子供隊たちがオンラインで会うことができる環境を作ることがグローバル教育としての柔道を普及させるうえでポイントだと考えています。

2. 参加者の声

  • 柔道の可能性について改めて考えました。ありがとうございました。
  • 嘉納先生を尋ね自分のアーカイブを重ねて話しながら、温故知新を考えた事。今後の柔道から見た体育教育や国際交流の重要さは、Well-beingを見直すいいきっかけになったと。

3. セッションを終えて

当日は、講師から10分程度の講義があり、そのテーマについて参加者と20分程度話し合う、という流れで進行し、①学校授業、②嘉納治五郎、③国際柔道交流、それぞれのテーマを切り口として参加者と話し合いが行われました。

①については、参加者から「自分の授業に取り入れたい」という意見があったり、②については「嘉納治五郎という人物を初めて知った。もっと知りたい」ということで嘉納治五郎と日本の体育についての話題になったり、③については、昔、海外の方と「文通」していた参加者がご自身の国際交流の影響を話してくださったり、国際化する社会に向けて、武道を通じて日本の伝統文化を学ぶことについて話題になるなど、様々な意見が出されました。

柔道のこれからについて、多様な視点で話し合いをする機会はなかなかないので、参加者との話し合いを通じて多くの学びをいただくとともに、とても充実した時間を過ごすことができました。改めて、ありがとうございました(酒井)。

4. セッション紹介

セッション名
柔道のこれからを考える- 学校授業・嘉納治五郎・国際交流の視点から-

セッション内容
「柔道」について語る場です。3名の登壇者からは、学校授業での柔道、嘉納治五郎、国際柔道交流など、それぞれが考える柔道の魅力や可能性をお話させていただきます。そして、参加者と共に、柔道の魅力や可能性、そして、どのようにしたら柔道は人々のWell-beingを高めることができるのか、などを話し合います。

講師
藤原修一氏
千葉大学教育学部附属中学校 保健体育科教諭

金正嘉彦氏
介護ヘルパー柔道コーチ

酒井重義氏
NPO法人judo3.0

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