理事の久保賢太郎氏の新著「褒めるは学びの落とし穴 子どもが輝く対話のメカニズム 」3/17発売!

未来の体育を構想するプロジェクトの理事を務めている久保賢太郎氏が、2021年3月17日、新著「褒めるは学びの落とし穴 子どもが輝く対話のメカニズム」を出版されました。ぜひ手に取っていただけたら幸いです。

本の紹介

先生=Teacher→Designer・Coordinaterへ!
知識を押し付けるような授業からの転換を。
「学び」の理論と子どもが主体的に自立する教室づくりを提案します!
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こうやって過去を振り返ることは楽しいし余韻に浸かっていたい気持ちは少なからずある。でも私の成長は小学校だけでは終わらない。少しずつ成長しながら新しい道を創り、自分だけにしか味わえない思い出を創っていきたい。まるでクボケンの座右の銘のように。
「今ここにない未来は自分で創る。」
卒業生より
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■脱・「教える」!
東京学芸大学附属世田谷小学校の教師、通称クボケン。
「当たり前を疑う」「自分の頭で考える」「やる気スイッチくらい自分で押す」そして、「ありたい自分、ありたい未来を自分で描く」
こうした考えを学級作りのビジョンとして掲げています。
例えば、子どもが「教室に卓球台がほしい」といったら、メリットなどを議論させた末に導入させたり、選挙に合わせた模擬投票の授業では、「実際に見てみないと分からない」と言う子どもたちと学校を飛び出し選挙ポスターを見に行ったりなど、子どもたちの意欲・好奇心を尊重し、自分たちでルールを決める、自分で学ぶ目的をつくりだす学級をつくってきました。
教鞭をとりながら、修士課程を修了し、令和3年度からは博士課程に進む勤勉家。本書では第一章で、特に大事にしている「6つの教育理論」を紹介した上で、第二章では4月の学級開きから、3月の卒業式まで、クボケンのクラスで子どもたちが「自分たちで教室を作り上げていく」様子を紹介しています。
■子どもたちが学習をつくりだす
6つの理論としている1つは教育学者の生田久美子氏が提唱する「TaskとAchievement」。
生田氏(2011)は、「『技術』つまり『行為のテクニック』や『手続きの知識』を追うことができても、特定の状況の中で適切な判断に基づいた表出ができなければ、技能が獲得できたとは言えない」と述べています。つまり、何かが「できた」「わかった」というのはあくまで「その行為が再現できる」ことを表しているにすぎない=taskをこなしているにすぎないのであって、理解したり、技能になったりといったような、その子の内面に腑に落ちた状態に「到達する」こと=achievementとは本質的に異なる、ということを主張するのです。
ここでいうtaskの学びが「習得」「獲得」型学習の産物であることは論を待ちません。こうした学習観から脱却し、学び手の主体的参加を通したachievement=腑に落ちた理解へと誘わなければ、極限すれば、「学んだとはいわない」のです。
これまでの多くの学校の授業観は、この「方法の学び」に終始していたように思います。もちろん、それも必要なことです。ですが、それで終わってしまっていては、情報がトレースされたマシンです。それらをどのように活用したり、それらの意味を問い直したり、自分たち自身でまた新たな方法を構築したり。そうした「プロセス」を経ながら、その方法は一層腑に落ちたものとして理解され、その子のachievementとなっていきます。
そのために、活動への意欲と同時に、学習者自身が自分ごととして目標を創出することのできるような学習展開、持っている知識や技能を活用して問題解決に取り組むような学習環境、そして他者との相互作用によって問題解決しながら、一人一人が持っている知識や技能を活用しつつ、それらが更新されていくような設定が必要になってきます。
この考え方に基づくと、体育科「タッチハンドボール」というゴール型ゲームでの子どもの姿は以下のように展開していきます。
Task1=タッチハンドボールをやってみる
Achievement1=一人で攻めて楽しかった
Task2=プレイの原則を知る
Achievement2=とりあえず走って、だめだったらキーパーに渡した方が、形をつくり直せるから、いいと思う。そのために、パスする間に相手を入れてはならない。
Task3=攻めなおし
Achievement3=やみくもに投げて取られることが多くて、無理せずキーパーに戻して作り直しができる。
……
このように課題の設定→新たな知識を体験的に獲得→課題の設定……という形で授業をつくっていく過程にこそ本当の「学び」があるのです。
タッチハンドボールの具体例は、第二章7月「子どもたちが学習をつくりだす」で詳述しています。こうした理論に基づいて目の前で楽しむ子どもの学びを支えていく「対話のメカニズム」が本書に通底するテーマです。
■「前に倣え」文化からの転換へ
執筆のきっかけは、教育実習を担当した新任教師からのクボケンへのメッセージでした。
「学校にいくのが苦痛です。教育実習のときはあんなに楽しかったのに。」
子どもたちから慕われ、彼らの気持ちや変化を感じる「機微」に富んだ、素敵な学生だったのに、なぜなのだろう。聞いてみると、赴任した学校が旧態依然のままで、面白い授業を提案しようとしても、「別の担任と同じように動け」といった指示があって、何もチャレンジができない様子でした。
「これからの学校」「これからの教師」はどうあるべきなのか。どんな学びが求められていくのだろうか。
子どもの未来の創造につながる「学び」を、心から楽しめる「教師の生き方」を生み出していく手助けになれば幸いです。

著者

久保賢太郎
東京学芸大学附属世田谷小学校教諭。
東京学芸大学大学院連合学校教育学研究科博士課程(令和3年4月〜)。
学研教育みらい小学校体育副読本「みんなの体育」編集委員。一般社団法人「未来の体育を構想するプロジェクト」理事。一般社団法人「Sports As Life Hachinohe」顧問。株式会社AVR Japan 教育アドバイザー。体育授業研究会常務監事。学校体育研究小学部会事務局長。
現代の教師に求められる資質能力や教師の自己変容プロセスなどを問題関心としながら、日々の授業実践・研究活動に取り組んでいる。専門はスポーツ教育学・教師教育・現象学的教育学。